ワイン造りは、少なくとも数千年前の古代にさかのぼるとされています。コーカサス地方(現在のジョージア周辺)が最も古い産地の一つと考えられており、そこから地中海世界、ヨーロッパ、そして新世界へと広がっていきました。
歴史の流れは「古代の誕生」「ローマと修道院による発展」「大航海時代以降の世界展開」の3つの節目で押さえると整理しやすくなります。ここでは、それぞれの時代がいまのワインの飲み方や産地の呼び名にどうつながっているのかを、初心者向けにまとめます。
ワインは古代のコーカサス周辺で始まったと考えられている
ワイン造りの起源は、コーカサス地方一帯とされるのが一般的です。ブドウは果皮に自然な酵母(糖をアルコールに変える微生物)が付くため、果汁が容器の中で偶然発酵したことが始まりだと考えられています。
ジョージアには、いまも「クヴェヴリ」と呼ばれる大きな素焼きの壺を地中に埋めて醸造する伝統が残っています。白ブドウを皮ごと発酵させるため、琥珀色のワインになるのが特徴です。いわゆるオレンジワインの源流として語られることもあります。
その後ワインはエジプトやメソポタミアに伝わり、地中海を渡るフェニキア人やギリシャ人によって各地へ運ばれました。当時は水で割って飲むことも多く、現代のように食事と一緒に楽しむ文化の原型が育っていきます。
ローマと修道院が「産地」の基礎をつくった
ヨーロッパでワイン産地が広がった最大の理由は、古代ローマが領土とともにブドウ栽培を持ち込んだことです。いまのフランスやドイツ、スペインの主要産地の多くは、この時代に栽培が始まったと言われます。ワインは兵士や市民の日常の飲み物であり、運ぶための樽や、保存の工夫も発達しました。
ローマ帝国が衰えたあと、ブドウ畑を守ったのが教会や修道院です。ミサでワインが必要だったためで、とくに中世フランスのブルゴーニュでは、修道士たちが畑を区画ごとに観察し、味の違いを記録していったと伝えられます。
これが「同じ品種でも畑によって味が違う」という考え方、つまりテロワール(土壌・気候・地形などの環境)の発想につながりました。ブルゴーニュのラベルに畑の名前が書かれているのは、この長い観察の歴史の名残です。
大航海時代以降に世界へ広がり、技術も進んだ
15世紀以降の大航海時代には、ヨーロッパ人の移住とともにブドウが海を渡りました。南米のチリやアルゼンチン、南アフリカ、北米、オーストラリア、ニュージーランドなどが、いわゆる「新世界」の産地です。
近代になると、ガラス瓶とコルク栓が普及し、ワインを横にして長く熟成させる文化が生まれました。いまのボトルの形やラベルの表示ルールも、こうした流れの中で整ってきたものです。
日本では、明治時代以降に本格的な国内でのワイン造りが始まりました。山梨をはじめ、各地で日本の気候に合う品種や造り方が模索され、現在も進化が続いています。
歴史を知ると、ワイン選びが少し楽になる
歴史の知識は、ワインを選ぶときのヒントにもなります。たとえば次のような見方ができます。
- 旧世界(ヨーロッパ)のワイン:産地名がラベルの中心。長い歴史の中で「この土地ではこの品種」という型が決まっている
- 新世界のワイン:品種名が前面に出ることが多く、味の想像がしやすい
- ジョージアなど伝統製法のワイン:皮ごと発酵させた個性的な味わいで、古代の造り方に触れられる
気になった産地の歴史を一つ調べてから飲むと、同じ一杯でも味わい方が変わります。ゆっくりと会話を楽しみながら、無理のないペースで味わってみてください。
よくある質問
Q. ワインは世界で一番古いお酒ですか?
断定はできません。ワイン造りは非常に古い歴史を持つとされますが、ビールや他の発酵飲料も古くから存在したと考えられており、どちらが最古かははっきりしていません。「最も古い醸造酒の一つ」と捉えるのが安全です。
Q. 「旧世界」「新世界」の違いは歴史と関係がありますか?
あります。ヨーロッパなど古くからワインを造ってきた国を旧世界、大航海時代以降に栽培が広まった国々を新世界と呼びます。旧世界は産地名、新世界は品種名を表示する傾向がありますが、例外も多くあります。
Q. 古代のワインは今と同じ味だったのでしょうか?
同じではなかったと考えられています。当時は保存のために樹脂やハーブを加えたり、水で割ったりすることもあったとされます。現在のように品種や醸造を管理して造るスタイルは、近代以降に発達したものです。